いごん(遺言)の真実─法律が守る最後の意思とその光と影

いごん(遺言)の真実─法律が守る最後の意思とその光と影

いごん(遺言)の真実─法律が守る最後の意思とその光と影に関する最新の話題を丁寧に解説いたします。

法的効力を持つ遺言には、民法が認める三つの普通方式があります。どれを選ぶかで、作成の手間・費用・安全性が大きく変わります。

自筆証書遺言─最も身近で最もリスクが高い方式

全文を自分の手で書く。日付を記入する。署名し、押印する。民法第968条が定めるこの三要件を満たせば、自筆証書遺言は成立します。費用はゼロ。弁護士も公証人も不要です。

しかし、この手軽さが落とし穴になります。2018年の最高裁統計によれば、家庭裁判所に持ち込まれた自筆証書遺言の約12%が形式不備で無効と判断されました。「平成三十年三月」を「2018年3月」と書いただけで無効になるケースもあります。日付の記載ミス、押印忘れ、他人による代筆─こうした些細な不備が、故人の意思を無に帰すのです。

2020年7月、法務局による保管制度が始まりました。この制度を利用すれば、紛失や改ざんのリスクは大幅に減ります。しかし内容の法的妥当性までは審査されません。「長男にすべての財産を相続させる」と書いても、遺留分侵害の問題は残ります。

公正証書遺言─専門家が保証する確実性

公証人の面前で口述し、公証人が筆記する。証人二名が立ち会う。この手続きを経た公正証書遺言は、最も安全性が高い方式とされています。

費用は財産額により異なりますが、一般的に5万円から15万円程度です。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。家庭裁判所の検認も不要で、相続開始後すぐに執行できます。

ただし完璧ではありません。2019年、認知症が進行した高齢者が作成した公正証書遺言の有効性が争われた裁判で、最高裁は「公証人が作成に関与しても、遺言者の意思能力が欠如していれば無効」との判断を示しました。公正証書という形式が、内容の正当性を保証するわけではないのです。

公証役場での遺言作成手続き

秘密証書遺言─内容を秘匿したい場合の選択肢

内容は誰にも見せない。しかし存在だけは公証人と証人に証明してもらう。この中間的な方式が秘密証書遺言です。

実務上、利用されることは稀です。日本公証人連合会の統計では、年間約11万件の遺言のうち秘密証書遺言はわずか100件程度。手間がかかる割にメリットが少ないためです。内容の法的妥当性は自分で判断しなければならず、検認も必要です。

田中 結衣
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田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。