この二人の演技に共通するのは、小手先の器用さを拒絶した「泥臭さ」だ。柄本明が1976年に旗揚げした劇団東京乾電池で培ってきたのは、日常の猥雑さや人間の滑稽さを容赦なくえぐり出すアングラ精神だった。不条理でありながら、どこまでもリアル。その系譜は、形を変えて安藤サクラの演技にも色濃く脈打っている。
是枝裕和監督の『万引き家族』で世界を震撼させた安藤の涙を、世界中の批評家が絶賛した。台本に書かれた感情をなぞるのではなく、その瞬間に肉体が感じた痛みをそのまま吐露するような芝居。それは、柄本明が半世紀近く舞台や映画で愚直に貫いてきた「役を生きる」という狂気と、根底で深く響き合っている。