ネット上のQ&Aサイトや愛犬家コミュニティには、シニア犬の介護をめぐる数多くの誤解が溢れています。善意の情報交換であっても、医学的根拠を欠いた思い込みは愛犬の苦痛を長引かせる要因になりかねません。
その代表格が「目が白くなってきたから、もう白内障で治らない」という諦めです。眼科専門医の知見によれば、12歳前後の犬の瞳が青白く濁って見える現象の多くは、加齢現象である「核硬化症」です。核硬化症は視覚が維持されており、治療の必要はありません。一方で本物の白内障は炎症(ぶどう膜炎)や緑内障を併発し、激痛を伴う恐れがあります。素人判断で放置せず、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)による正確な眼科検査を受けることが第一歩です。
もう一つの深刻な誤解は、「自力で歩けなくなったら寝たきりにさせるしかない」という固定観念です。歩行困難になった犬を平らな寝床に寝かせ続けると、わずか数週間で関節が拘縮し、床ずれ(褥瘡)が形成されます。四肢を支える専用の介護ハーネスや歩行器を活用して「起立姿勢」を保たせる時間を作るだけで、内臓の圧迫が解除され、自律神経の活性化や排泄機能の改善につながる事実は、医療現場で広く実証されています。