トヨタ生産方式の根本には「徹底したムダの排除」がある。大野耐一氏が打ち出したこの苛烈なまでの思想は、当初、社内や協力工場から強い反発を受けた。当たり前とされていた仕掛品(作りかけの製品)の在庫を「悪」と断じ、作りすぎを厳禁としたからだ。
関健一の功績は、この大野思想を「誰もが実行できる具体的な手順」に翻訳した点にある。大野氏の直言や抽象的な指示を、具体的な作業標準、治具の改善、工程の再配置へと落とし込んだ。いわば、TPSという哲学を現場で動くメカニズムへと昇華させる「伝道師」であり「建築家」であった。
7つのムダと「なぜ」の探求
関健一が指導現場で最も重視したのが、有名な「7つのムダ」の発見である。
- 作りすぎのムダ:すべてのムダの中で最悪とされるもの。
- 手待つのムダ:作業者が機械の動作を待つだけの時間。
- 運搬のムダ:物の移動そのものは価値を生まない。
- 加工そのもののムダ:不要なオーバースペックや工程。
- 在庫のムダ:問題点を隠し込む悪の根源。
- 動作のムダ:探す、しゃがむ、手を伸ばす無駄な動き。
- 不良をつくるムダ:手直しや廃棄を生む損失。
彼は「なぜ」を5回繰り返すことで、表面的な現象の裏に潜む真の原因(真因)を突き止めるトレーニングを徹底した。問題が起きれば即座にラインを止め、現場で現物を確認し、現実的に対策を打つ。「三現主義」の実践こそが、関の真骨頂であった。