多くの現代の若者にとって、田中邦衛といえば「温かい父親(黒板五郎)」のイメージが強いかもしれない。しかし、黄猿のルーツを辿って彼が若き日に演じた東映実録ヤクザ映画に触れた人々は、そのギャップに言葉を失う。
『仁義なき戦い』シリーズで見せた、ずる賢く、卑屈でありながら、どこか憎めない裏切り者の演技。あるいは、冷酷な暗殺者を演じた時の凍りつくような眼光。それらすべてが黄猿の「どっちつかずの正義」という複雑な設定の血肉となっていることに、現代の視聴者は気づき始めている。キャラクターの深みは、昭和の銀幕を支えた役者の歴史そのものから引き継がれたものだったのだ。