令子が惹かれる先輩社員・工藤発(くどう はじめ)が胸の奥に抱え続ける、あまりにも重い過去も物語の重要な鍵を握っています。工藤の部屋で令子が偶然見つけた一枚の古い写真——そこに写っていたのは、現在の令子と瓜二つの姿をした女性と、幸せそうに寄り添う若き日の工藤の姿でした。
写真に写る女性こそが、かつて工藤の「婚約者」であった本物の鯨井令子(1人目)です。彼女は過去に既に命を落としており、工藤はその喪失感を胸に抱えたまま、突如として現れた「2人目の令子」と出会うことになりました。
工藤が時折見せる哀愁に満ちた眼差しや、現在の令子に対して一線を引くような態度は、亡き婚約者への消えない愛と、目の前のクローンである令子を一人の独立した存在として愛してしまいそうになる葛藤から生じています。「過去の幻影を愛しているのか、それとも今の彼女を愛しているのか」という工藤の心の揺れ動きは、本作のラブストーリーにおいて最も胸を締め付けるポイントです。