坊ちゃんがセバスチャンと契約を交わすに至った経緯には、目を背けたくなるような凄惨な過去が存在します。1885年の冬、ファントムハイヴ邸は何者かの襲撃を受け、両親は惨殺。屋敷は炎に包まれ、生き残った幼い双子は人身売買組織へと売り渡されました。
買い取られた先は、悪魔崇拝を掲げる狂信的なカルト教団でした。凄惨な虐待と屈辱を受け続けた兄弟は、黒ミサの儀式の祭壇へと上げられます。そこで兄である本物のシエルは心臓を刃で貫かれ、悪魔を呼び出すための生贄として命を落としました。
絶望の極限状態の中、兄の死という莫大な「対価(渡航費)」によって現世に召喚されたのが、のちの執事セバスチャン・ミカエリスです。瀕死の檻の中で憎悪を燃え上がらせた弟は、「絶対に嘘をつかない」「命令には完全に服従する」「復讐を果たすその瞬間まで自分を守り抜く」という条件のもと、自らの魂を報酬として悪魔との絶対契約を結びました。すべてを失った少年は、兄の遺志とファントムハイヴの名を奪う形で、復讐の修羅道へと足を踏み入れたのです。