感染症治療の現場において、医師・薬剤師が最も頭を抱える患者行動があります。それは、「熱が下がって症状が楽になったから、残りの薬は取っておこう」という服薬の自己中断です。
抗生物質を服用し始めると、感受性の高い(薬が効きやすい)細菌から順番に死滅していきます。投与開始から2〜3日経過すると病原菌の総数が激減するため、発熱や喉の痛みといった自覚症状は劇的に改善します。しかし、この段階では「しぶとく生き残った生命力の強い細菌」が体内にまだ少数潜伏しています。
ここで服用を止めてしまうと、生き残ったタフな細菌が再び増殖を開始します。その際、中途半端に薬に晒された経験から変異を起こし、「クラリスロマイシンが全く効かない耐性菌」へと進化を遂げてしまうのです。再発したときには同じ薬が一切効かず、より強力で副作用リスクの高い第二選択薬・第三選択薬への切り替えを余儀なくされます。
「処方された日数は、症状が消えても最後まで完全に飲み切る」。これこそが、患者自身の体を守り、社会全体で抗菌薬の有効性を維持するための絶対不変の鉄則です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
- 服用を徹底すべき人:
医師の確定診断に基づきマイコプラズマ肺炎やクラミジア感染症と診断された患者、胃内視鏡検査を経てピロリ菌感染が確認された患者、耳鼻科で慢性副鼻腔炎の診断を受けマクロライド療法のプロトコルに乗っている患者。 - 慎重な事前確認が不可欠な人:
不眠症でベルソムラを服用中の患者、高血圧や狭心症、高脂血症で複数の中枢代謝型薬剤を併用している高齢者、心電図異常(QT延長)を指摘されたことがある患者、妊娠中・授乳中の女性。お薬手帳を必ず提示し、すべての併用薬を薬剤師に開示しなければなりません。