自然素材住宅を追求するにあたり、避けて通れなかったのが現行の建築基準法や構造計算の壁である。一般的な木造や鉄骨造とは異なり、土壁や版築といった不均質で不定形な素材は、数値による強度証明が極めて難しい。建築設計の現場では、耐震性や耐久性を保ちつつ自然素材のポテンシャルを最大化するための高度な計算と検証が繰り返された。
施主が夢を託した注文住宅だからこそ許容されたこの実験的アプローチは、一方で日本の厳しい気候風土——猛暑、豪雨、台風、そして地震——との絶え間ない戦いを意味していた。構造計算上の基準をクリアした上でなお、自然の猛威が容赦なく襲いかかる現実との折り合いをどうつけるか。そこには設計図面の上だけでは推し量れない試行錯誤が潜んでいた。