阿部悟が選手として最も活躍したのは、2012年から2018年にかけての6年間だった。この時期、彼はクロスカントリースキー競技を中心に、国内大会からFIS(国際スキー連盟)公認の国際大会まで幅広く参戦した。
特に注目すべきは、FIS Far East Cupでの成績だ。このシリーズは、アジア・太平洋地域で開催される国際大会で、ワールドカップに次ぐ重要性を持つ。阿部は複数回にわたり1位から50位のランキング圏内に入り、日本代表としての実力を証明した。
国内大会でも安定した成績を残し続けた。全日本スキー選手権をはじめとする主要大会で上位入賞を果たし、自衛隊体育学校の看板選手として認知されるようになった。しかし、彼の本当の強みは、単純な順位以上のものだった。
データ分析への早期着目
2010年代中盤、阿部は選手としての活動と並行して、競技データの分析に興味を持ち始めた。GPS装置による滑走ルート分析、心拍数モニタリング、射撃精度の統計処理。当時の日本の冬季競技界ではまだ珍しかったこれらの手法を、彼は積極的に取り入れた。
この分析志向が、後のコーチとしてのキャリアにつながっていく。選手時代に蓄積した膨大なデータと経験が、指導者としての阿部の最大の武器となるのだ。