規模を拡大せず、品質を追求する。「きしがみ」の経営方針は、現代の飲食業界において逆行するようにも見える。しかし、それこそが本質なのだ。
大量生産、大量消費の時代において、一杯一杯に魂を込める店は貴重だ。効率やコストパフォーマンスを追求すれば、もっと楽な経営ができるかもしれない。しかし店主はそれを選ばない。蕎麦職人としての誇りと、客への敬意が、この選択を支えている。
「きしがみ」のような店が存在し続けることは、日本の食文化の多様性を保証する。チェーン店にはない個性と、職人技が息づく場所。それが宇津ノ谷の「きしがみ」なのだ。