テレビ番組の制作現場では、過去数年間でキャスティングの価値基準が根底から覆りつつあります。バラエティ番組のチーフプロデューサーは次のように現場の苦悩を語ります。
「かつては『ネームバリューのある大御所をとりあえず座らせておく』ことが番組の箔付けになりました。しかし今は1クールごとに費用対効果(ROI)が厳格に査定されます。世帯視聴率が取れてもコア層が動かないベテランには、申し訳ないですが出演料の値下げをお願いするか、出演本数を減らしていただくしかありません。現場で重宝されるのは、トークが回せて、SNSでの炎上対策ができて、自ら動画切り抜き配信に協力してくれるコスパの高い中堅です」
SNSや知恵袋などのコミュニティでは、「なぜあんなにつまらないタレントがテレビに出続けているのか」「ギャラ泥棒ではないか」といった辛辣な意見が散見されます。しかし、現場のキャスティング担当者に言わせれば、視聴者が「面白い」と感じることと「安心して番組を進行できる」ことの間には深い乖離があります。
アドリブで笑いを取る能力よりも、スポンサーのNGワードを踏まず、タイムスケジュール通りにVTR振りをこなす職人的なスキルこそが、現在のテレビ局が最も求めている資質です。その安定感を持つひと握りのタレントにオファーが集中し、結果として高額ギャラが維持される構図が浮き彫りになっています。