問題の本質を難しくしているのは、日本の道路をめぐる法規制のグラデーションだ。道路交通法第76条第4項第3号は「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、又はこれに類する行為をすること」を禁じている。しかし、住宅街の行き止まりや私道のような空間が「交通のひんぱんな道路」に該当するかどうかは、現場の警察官にとっても判断が分かれる極めて曖昧な領域だ。
警察庁が公表する生活安全警察関連の相談統計を見ても、公道上での子どもの遊びや迷惑行為に関する110番通報は日常茶飯事となっている。通報を受けたパトカーが住宅街へ急行し、現場で注意を与える光景はもはや珍しくない。だが、警察は民事不介入の原則に縛られており、事件性のない事案に対して恒常的な監視を行うことは物理的にも不可能だ。
一方、国土交通省が進める「歩行者共存道路」やコミュニティ道路の整備方針では、住宅街の道路を単なる車の通路ではなく地域コミュニティの空間として再生する思想も掲げられている。制度と現場、そして法執行の狭間で、住民たちの権利意識が激しく衝突を繰り返している。