個人投資家が日々集う太平洋セメントYahooファイナンス掲示板や各種投資コミュニティを覗くと、「ここが絶好の買い場」「いや、典型的な天井圏のシグナルだ」という激しい議論が投稿欄を埋め尽くしています。投資家がここまで敏感に反応している最大の要因は、長年にわたり低迷を続けてきたオールドエコノミー銘柄が、劇的な業績好転を背景に過去数年来の高値圏をうかがう展開を見せている点にあります。
肯定派が掲げる「買い時」の根拠は明快です。セメント製造に不可欠な石炭価格の沈静化に加え、数次にわたる国内販売価格の引き上げが完全に浸透したことで、営業利益率が力強くリバウンドしている事実です。これまでコスト高を自社で吸収しきれず利益を圧迫されていた構造から完全に脱却し、安定したキャッシュフロー創出力を取り戻しつつある点が、割安株(バリュー株)物色の波に乗っています。
一方で、慎重派が主張する「下落の予兆」も見逃せません。資材価格と人件費の高騰によって国内の建設プロジェクトが延期・見直しを余儀なくされており、セメントの絶対的な出荷数量が減少傾向にある点です。さらに、利益の柱の一翼を担ってきた北米(米国西海岸)事業において、米国の金利動向や住宅着工件数の鈍化が影を落とし始めているのではないかという懸念が、掲示板上での利確売りを誘発しています。
市場の喧騒を冷静に紐解くと、掲示板が騒然としている本質は銘柄の経営破綻リスクなどではなく、「構造改革による評価替え(リレーティング)が続くか、それとも市況一巡による利益ピークアウトを迎えるか」という、投資家の時間軸の違いから生じる見解の相違に帰着します。