警察庁が公表する懲戒処分統計や全国の報道各社の取材データを分析すると、現職警察官による窃盗事件の動機は、一般的な困窮型の窃盗とは大きく異なる傾向が見られます。警察官の万引き理由として最も多く挙げられるのは、「金を払うのがもったいなかった」という利欲的な動機にとどまらず、「強いプレッシャーからの解放感」「スリルを味わいたかった」「無意識に手が出てしまった」という特異な心理的背景です。
警察業務は24時間体制の交替制勤務や厳しい上下関係、事件事故現場での過度な緊張感など、日常的に極めて高い精神的負荷にさらされます。公判記録や内部調査の手記によれば、「重責から逃れたい一心で、盗む瞬間の緊張と成功したときの解放感に依存してしまった」と供述する事例が散見されます。このような精神的逼迫が、規範意識を麻痺させる引き金となっています。
さらに見過ごせないのが、精神医学における「クレプトマニア(窃盗症)」の存在です。これは経済的困窮や転売目的ではなく、「物を盗みたいという衝動を制御できなくなる」精神障害の一種です。万引きを繰り返す警察官の窃盗動機を精査すると、自宅に未開封の同じ商品が何十個も放置されていたり、所持金が数万円あるにもかかわらず数百円の缶飲料を盗んだりするなど、クレプトマニアの臨床的特徴と一致する事例が少なくありません。