旅の計画段階でネット上の情報を鵜呑みにしていると、現場で思わぬギャップに戸惑うことになる。特に多くの旅行者が陥りがちな誤解を是正しておきたい。
第一の誤解は、「3つの茶屋街はすべて徒歩圏内で歩いて回れる」という思い込みだ。前述の通り、ひがし茶屋街と主計町茶屋街は浅野川大橋を挟んで目と鼻の先(徒歩約3分)に位置する。しかし、にし茶屋街は南西に約2.5km離れた犀川エリアにあり、両地域を徒歩で移動すると35分以上を要する。バスやタクシー、あるいは金沢市の公共シェアサイクル「まちのり」を適切に活用しなければ、移動だけで貴重な観光時間を浪費することになる。
第二の誤解は、「夜の茶屋街は一見お断りだから一般人は楽しめない」という先入観だ。確かに芸妓を呼んで宴席を設ける伝統的な「お茶屋」は紹介制・一見お断りを維持しているが、町家を活用したバー、ビストロ、懐石料理店は一般の予約を受け付けている店舗が大半だ。敷居の高さに過剰に怯える必要はなく、正規の予約手続きを踏めば、誰でもその歴史的空間を享受できる。
第三の誤解は、「早朝に行っても何もない」という諦めだ。確かに店舗は午前9時〜10時頃まで開店しないが、写真撮影や歴史的建造物の造形美を味わう目的なら、朝7時〜8時台こそが至福の時間となる。観光客が一人もいない静まり返った通りで、朝日を浴びる木虫籠(キムスコ:細い縦格子)の精緻な職人技を独占できる価値は計り知れない。