江藤雄造の名を広く一躍有名にしたのが、透明アクリル素材と漆芸技法を組み合わせた立体蒔絵作品だ。代表作「金魚を泳がせる」シリーズは、従来の漆器に対する固定観念を根底から覆した。
本来、漆は木や紙などの不透明な素地に塗るものとされてきた。しかし、江藤はあえて完全な透明体であるアクリル板をキャンバスに選んだ。
光と透明感が織りなす新しい視覚体験
アクリルの表裏や内部の層に細かな蒔絵を施すことで、作品の中に奥行きが生まれる。光が透けることで、金粉や銀粉、朱色の漆が色鮮やかに反射し、まるで水槽の中で金魚が優雅にヒレをなびかせているかのような錯覚を引き起こす。
「敷居が高いと思われがちな伝統工芸を、子どもから大人まで直感的に楽しんでもらいたい」という江藤の思いが、この新しい表現手法を生み出す動機となった。素材の特性を熟知しているからこそ成功した、緻密な実験の成果である。