1942年2月3日午前6時頃、山口県宇部市の長生炭鉱で起きた「水非常事故」は、日本の炭鉱史上でも際立って悲痛な災禍である。浅い海底を掘り進める危険な海底炭鉱であった長生炭鉱では、落盤による海水流入の危険性が常につきまとっていた。事故当日、坑道天井が崩落し、猛烈な勢いで海水が坑内に流入。避難の暇もなく、坑内で働いていた作業員183名が一瞬にして濁流に飲み込まれた。
犠牲者183名のうち、136名にのぼるのが朝鮮人強制労働者であった。戦時下の激甚化する戦局において、エネルギー源確保のための増産圧力が限界を超えていた。安全対策を軽視した突貫工事が引き起こした人災という側面は否定できない。しかし戦時下の報道規制により事故の詳細は伏せられ、終戦とともに坑口は塞がれ、事件は長きにわたり闇に葬られた。