日本の家庭で飼育されている猫の死亡原因において、長年トップに君臨し続けているのが猫の慢性腎臓病だ。5歳を超えたあたりから発症リスクが急上昇し、15歳以上の高齢猫においては過半数がこの病に苦しむと言われている。
症状の進行は静かだ。初期には目立った変化が現れず、飼い主が異変に気づいた時には、すでに腎臓のろ過機能を担うネフロンの7割以上が破壊されているケースも珍しくない。老廃物を尿として体外に排出できなくなった体内には毒素が溜まり、尿毒症や劇的な体重減少、食欲不振を引き起こす。腎臓細胞は一度破壊されると二度と再生しない。それが従来の獣医学における常識だった。
その常識を根底から覆そうとしているのが「AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)」と呼ばれるタンパク質を用いた治療法だ。体内から排出されずに腎臓の尿細管へ蓄積した「死んだ細胞のゴミ」を掃除し、炎症を未然に防ぐ。この画期的なメカニズムこそが、世界中の愛猫家が切望してきた特効薬の正体である。