祭りのフィナーレを飾る「建て御柱」は、境内へと曳き着行された御柱を四隅に直立させる神聖な儀式です。しかし、実は木落しと同等かそれ以上に重大事故の危険を孕んでいます。
御柱を立てる際、上部には「メドデコ」と呼ばれるV字型の巨大な角のような木が取り付けられ、そこへ華やかな衣装をまとった氏子たちが乗って威勢よく木遣り(きやり)を歌い上げます。柱がワイヤーと滑車で引き起こされるにつれ、氏子の乗る位置はビルの3〜4階に相当する地上15メートル前後の高所へと達します。
なぜ転落事故が多発してきたのか。その最大の理由は、足場の不安定さと予期せぬ揺れにあります。巨木が地面に対して垂直に固定されるまでの間、柱はワイヤーの張力や風、乗り手の体重移動によって激しく揺動します。かつては「命綱をつけることは男らしくない」「神事の格式を損ねる」という心理的抵抗や伝統的な慣習があり、十分な安全帯を装着しないまま高所作業が行われていたケースが散見されました。この構造的要因が、一瞬のバランス崩壊を即座に致命的な転落へと直結させていたのです。