月性が残した名詩の全体像を把握すると、「人間至る所青山あり」という結びの句がどれほど強い緊迫感と熱量を持って放たれたのかが如実に理解できます。
【漢詩全文】
男児立志出郷関(だんじこころざしをたててきょうかんをいづ)
学若無成死不恨(がくもしならずんばしすともうらみず)
埋骨何期墳墓地(ほねをうずむるなんぞふんぼのちをきせん)
人間至る所青山あり(じんかんいたるところせいざんあり)
【現代語訳】
「男子が固い志を立てて故郷の関所を出るからには、学問や事業を成し遂げられないなら死んでも悔いはない。自分の骨を埋める場所として、どうして先祖代々の墓地などを望もうか。世の中の至る所に、骨を埋めるべき青い山(墓場)などいくらでもあるのだから。」
第1句の「男児立志出郷関」から圧倒的な覚悟が伝わります。交通網も通信手段も発達していなかった幕末の旅立ちには、生きて二度と故郷の土を踏めないかもしれない現実がありました。死を恐れて安全地帯にとどまるのではなく、天下国家のために命を投げ打つ覚悟を決めた若き僧の叫びが、この七言絶句の土台となっています。