寺田農さんの名前を語る上で欠かせないのが、宮崎駿監督の映画『天空の城ラピュタ』(1986年公開)に登場するムスカ大佐(ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ)の声優としての怪演です。
冷徹でありながらどこか気品を漂わせ、終盤で見せる狂気と哀愁。寺田さんの深みのある低音ボイスが吹き込まれたことで、ムスカは日本アニメ史に残る屈指の悪役として君臨することになりました。「見ろ!人がゴミのようだ!」「目がぁ、目がぁ〜!」といった名台詞は、テレビ放送のたびにSNSを席巻し、インターネットミームとしても定着しています。
生前のインタビューにおいて、寺田さんは「アフレコ当時は台本を渡されて短時間で収録したため、ここまで長く愛されるキャラクターになるとは思っていなかった」とユーモアを交えて振り返っていました。専業声優とは一線を画す、舞台仕込みの立体的な台詞回しが、キャラクターに唯一無二の生命を吹き込んだことは間違いありません。