『絶歌』の出版において最も大きな争点となったのは、被害者遺族への配慮の欠如である。土師淳君(当時11歳)の遺族をはじめとする被害者家族は、手記の出版を事前には一切知らされていなかった。出版事実を知らされた遺族は「二次被害に他ならない」と激怒し、即座に回収と絶版を求める声明を発表した。
テレビや新聞などのマスメディアはこの騒動を連日大きく報じた。加害者が手記の印税によって利益を得る「サン・オブ・サム法」のような法規制が日本に存在しない点も議論の的となった。加害者が悲劇をメシの種にし、被害者の傷口に塩を塗る行為が法的に野放しにされている現状に対し、世論の反発は沸点に達した。ワイドショーや言論空間では、加害者の人権と遺族の感情、そして報道・表現の自由を巡る感情的な激論が繰り広げられたのである。