『サライ』の制作プロセスは、テレビ放送の歴史から見ても極めて異例かつ前代未聞の試みでした。事前に入念なリハーサルを重ねて作られたのではなく、生放送中の24時間以内に出演者と視聴者の手によって完全制作されたのです。
番組開始とともに、全国の視聴者へ向けて「心のふるさと」をテーマにしたメッセージや言葉の断片をFAXで募集しました。送られてきた膨大なメッセージの一枚一枚に谷村新司さんが目を通し、散りばめられた素朴な想いをひとつの物語として歌詞へと昇華させていきました。
一方で、作曲を担当した加山雄三さん(ペンネーム:弾厚作)は、番組が進行するスタジオの片隅でギターを抱え、届いたフレーズに合わせてメロディを紡ぎ出しました。放送終了が迫る中、譜面が完成したのはなんとグランドフィナーレの直前。出演者全員に刷りたての譜面が配られ、ほぼ初見の状態で生演奏・初披露されたという伝説的なエピソードが残されています。
2026年秋の谷村新司さんの旅立ち、そして加山雄三さんのコンサート活動引退を経た今もなお、二人が奇跡的な熱量で生み出したハーモニーは、色褪せることなく日本人の胸を打ち続けています。