熊が冬眠に入る最大のトリガーは、単なる気温低下ではなく、秋のうちにどれだけの脂肪を体内に蓄えられたかという「飽食度」にある。ブナやミズナラなどのドングリ類が広範囲で記録的な不作に見舞われると、個体は冬眠を維持するだけの皮下脂肪を獲得できない。飢えの恐怖に駆られた熊は、休眠状態に入るタイミングを失ったまま、積雪の迫る里山や市街地へと食べ物を求めて迷い込むことになる。
加えて、地球温暖化の影響による冬の平均気温上昇がこの事態に拍車をかける。降雪時期の遅れや暖冬によってクマの体内時計が狂い、代謝が下がりきらないケースが増えているのだ。山林の奥深くで静かに眠るはずだった個体が、人里近くの果樹園や生ゴミの匂いに誘い出され、越冬場所そのものを人里周辺へと移してしまう悪循環が定着しつつある。