文学のみならず、大衆文化における映像表現もまた、人々の情愛を描き続けてきた。不朽の名作として知られる映画『男はつらいよ』シリーズは、その最たる例と言えるだろう。
主人公・車寅次郎が繰り広げるドタバタ劇は、まさに極上のヒューマンドラマである。愚直で計算高く振る舞えない寅さんが見せる無償の優しさと、葛飾柴又の人々が織りなす情に厚いやり取りは、時代を超えて現代人の心を揺さぶり続けている。損得勘定で動く現代社会において、彼の見せる「世話焼き」や「お節介」は、失われつつある温かい人情の象徴だ。
時に失敗し、フラれながらも他者の幸せを願うその姿に、人々は自らの内にある優しさの原風景を重ね合わせる。