フェロモンによる召喚が否定されたとしても、専門家が口を揃えて「絶対に室内で叩き潰してはならない」と警告する理由は別にあります。それは、叩き潰すという物理的攻撃そのものが、人間側に甚大な被害をもたらすトリガーになるからです。
SNSや大手知恵袋などのコミュニティを分析すると、パニックになって叩いた結果、悲惨な事態に陥った現場の生々しい声が数多く記録されています。
「寝室の壁にいた大きなトビズムカデを丸めた雑誌で思い切り叩いたら、落ちた拍子に跳ね上がり、スリッパを履いていた足首に巻き付かれて激痛が走った」(30代男性・SNS投稿)
「畳の上で叩き潰したら、強烈な刺激臭のする黄色い体液が飛び散り、拭いてもシミと悪臭が完全に取れなくなった」(40代女性・生活相談掲示板)
叩き潰す行為が逆効果となる決定的な理由は次の3点に集約されます。
第一に、驚異的な反射運動による逆襲です。ムカデの神経系は頭部だけでなく各体節に神経節が分散しているため、胴体が破裂したり頭部が潰れたりしても、約数十分間にわたって猛烈な反射行動を続けます。半死半生の状態で身をくねらせ、触れたものに対して無差別に毒顎(どくがく)を突き刺すため、攻撃しようとした人間がカウンターで噛まれる事故が頻発しています。
第二に、強烈な悪臭と室内汚染です。ムカデの体内には消化液や特有の分泌物が充満しており、粉砕されると腐敗臭に似た強い異臭を放ちます。フローリングの継ぎ目や畳、カーペットに体液が染み込むと衛生的に極めて不快なだけでなく、その有機物の臭気自体がハエやカツオブシムシなどの二次的な害虫を引き寄せる要因になります。
第三に、卵や体内寄生のリスク管理です。初夏に腹部に卵を抱えた抱卵期の個体を潰してしまうと、室内に卵を撒き散らす結果になりかねません。物理的な破壊は、あらゆる観点から最も避けるべき初動といえます。