佐々木氏の学歴と職歴は、国際性と開拓精神に満ちた極めて華々しいものです。佐々木力の経歴を紐解く上で、最初の転機となったのが東北大学理学部数学科から同大学院を経て踏み切った、アメリカ・プリンストン大学大学院歴史学科への留学でした。
当時、世界最高峰の科学史研究拠点のひとつであったプリンストン大学で、佐々木氏は『科学革命の構造』で知られるトマス・クーンや、数学史の世界的権威マイケル・マホニーらの薫陶を受け、1980年にPh.D.(科学史)を取得しました。欧米の第一線で培われた緻密な原典講読力と理論的フレームワークは、帰国後の研究活動の強固な土台となります。
帰国後は東京大学教養学部助教授に着任し、1991年には大学院総合文化研究科教授に昇格。教養学部での幅広い教育活動と学際的研究の推進に尽力しました。2010年に東大を定年退官し東京大学名誉教授となって以降の進路は、世間を大いに驚かせます。北京に位置する中国科学院自然科学史研究所の教授(外国人教授)として招聘され、中国の若手研究者の育成と東アジア科学史の共同研究に身を投じたのです。後年は中部大学国際人間学研究所客員教授なども歴任し、生涯にわたって現場での教育・研究を貫きました。