社会現象を巻き起こしている映画『緑のおねえさん』。その着想の原点は、昭和から平成にかけて日本の街角に佇んでいた日常の「顔」にある。横断歩道で黄色い旗を振る女性たちの佇まいは、一見すると平和そのものだ。しかし、一歩路地裏に入れば、誰からも見られずに街の異変を見張り続ける視線が存在したのではないか――。この微細な違和感をすくい取り、極上のホラー・サスペンスへ昇華させた手腕は舌を巻く。
映画関係者の間では当初、これほどドメスティックな題材がグローバルに受け入れられるか疑問視する声もあった。しかし蓋を開けてみれば、日常の隙間に潜む恐怖というテーマは国境を越えて浸透。古典的なジャパニーズホラーが持つ「じわじわと迫り来る静かな狂気」と、現代的な心理サスペンスの緊張感が見事に融合し、観客の神経を擦り減らしている。