チーズを語る上で絶対に外せないのが、声優・山寺宏一の存在だ。「七色の声を持つ男」と称される山寺だが、番組開始当初に射止めた主要役こそがチーズだった。
言葉を一切喋らない犬の役。だからこそ、表現力には尋常ではない技術が求められる。「アンアン!」という単調に見える鳴き声の中に、喜怒哀楽はもちろん、ピンチの緊迫感やアンパンマンへの信頼、さらには周囲への状況説明までをも込めなければならない。山寺は即興のニュアンスを交えながら、声のトーンや息遣いだけで複雑な感情を見事に描き分けてみせた。彼が見せた圧倒的な演技の幅は、その後の同作品におけるカバおやジャムおじさん(2代目)といった数々の兼ね役への抜擢へとつながっていく。シンプルな犬の声にこそ、日本声優界の最高峰が見せる真骨頂が詰まっているのだ。