腹横筋は、腹筋群の最深層に位置する薄い膜状の筋肉だ。腹直筋(いわゆるシックスパック)や外腹斜筋の奥にあり、腹部を水平方向にぐるりと取り囲んでいる。医学・運動生理学の定説として、この筋肉が収縮すると腹圧が高まり、内臓を背骨側へ押し込みながらウエストを引き締める。これが「天然のコルセット」と呼ばれる所以だ。
重要なのは、腹横筋は「意識して収縮させないと働かない」筋肉だという点だ。走る、歩くといった動作では腹直筋や脊柱起立筋が反射的に働くが、腹横筋はデスクワークや長時間の座位では活動が著しく低下する。姿勢の崩れと下腹の突出は、単なる脂肪ではなく、この「深層筋の不使用」が主因であるケースが少なくない。運動指導者の間では、腹横筋の機能不全が「ぽっこりお腹」と「反り腰」の併発を引き起こすことが広く知られている。