真柴智を語る上で避けて通れないのが、同級生の優等生・川井みきとの関係性です。学年内でも目立つ美男美女であるふたりは、一見すると周囲からも公認のお似合いカップルのように映ります。しかし、その内実はお互いの承認欲求と打算が複雑に絡み合った、極めてドライな共依存関係でした。
川井みきは、「可愛い自分でいたい」「誰からも愛される善良な被害者でありたい」という強烈な自己愛の持ち主です。彼女にとって真柴の隣にいることは、自分のステータスを高め、美しく善良なスクールライフを完成させるための最高のアクセサリーでした。一方で真柴にとっても、優等生として振る舞い、周囲の支持を集める川井の存在は、自分が「まともな陽キャグループに属している」という安心感を得るための隠れ蓑として機能していました。
しかし、真柴は川井の底知れぬ計算高さや自己保身の狡さを完全に理解していました。将也を吊し上げて自分だけ涙を流して無罪を主張する川井の姿を、真柴はどこか冷ややかな目で見つめています。原作の終盤に至っても、真柴が川井の好意に本気で応える描写はなく、高校卒業後も恋人関係に発展することはありませんでした。お互いがお互いを自尊心を満たす道具として消費し合っていた関係――それこそが、ふたりのリアルな距離感だったと言えます。