作詞を手掛けた阿久悠さんは、『また逢う日まで』を制作するにあたってひとつの明確なコンセプトを掲げました。それは、「未練たらしく泣き濡れる従来の歌謡曲的な別れを描かない」という革新的なアプローチです。
当時のヒットチャートを席巻していた別れの曲は、女性が耐え忍ぶ姿や運命の残酷さを嘆く演歌調の哀愁が主流でした。しかし阿久悠さんは、背中を向け合い、互いのプライドと未来のためにきっぱりと関係を清算する「自立した男女の別れ」を描き出しました。「ふたりでドアをしめて」「ふたりで名前消して」というフレーズは、過去の甘い記憶を共有した部屋から同時に立ち去る決意を示しています。
リスナーの間でしばしば議論となる「別れの理由」について、歌詞の中では具体的なトラブルや裏切りはいっさい語られていません。ただ「たがいに傷つくその前に」「心のかよわぬおりには」とだけ綴られています。愛が終わったことを理性で受け止め、傷口を広げる前に別れを選ぶ――この乾いた都会的な美学こそが、筒美京平さんの華やかなブラスセクションとビート感に乗ることで、哀しみを突き抜けた爽快感へと昇華されたのです。