多くの患者が口を揃えるのが、「昼間は比較的落ち着いているのに、夜ベッドに入ると咳き込んで寝られない」という悩みです。この副鼻腔炎の咳が夜に悪化する現象には、身体の構造と自律神経のリズムという明確な2大要因が存在します。
第1のトリガーは、姿勢変化に伴う重力の影響です。立位や座位で活動している日中は、重力によって鼻水が少しずつ食道へと流れ落ち、唾液とともに嚥下(えんげ)されます。しかし、横たわると鼻咽腔から喉頭・気管の入り口にかけての勾配が水平になり、粘度の高い分泌物が喉の奥(後咽頭壁)に広範囲に滞留します。就寝中に意識が低下すると嚥下反射の頻度も落ちるため、溜まった鼻水が声門や気管の近くまで垂れ込み、激しい咳反射を誘発するのです。
第2のトリガーは、自律神経のスイッチングと気道の自然収縮です。ヒトの生体リズムは夜間、休息を司る副交感神経が優位になります。副交感神経が刺激されると気管支平滑筋は自然と収縮して空気の通り道が狭まり、気道分泌物(気管支の粘液)の分泌も促されます。そこへ上気道からの後鼻漏が流れ落ちてくるため、気道は内外から二重の閉塞刺激を受ける形となり、深夜から明け方にかけて発作のような咳が連続して発生します。