天体物理学者たちを今なお悩ませているのは、一部の恒星間天体が見せる不自然な動体挙動だ。通常、太陽接近時に天体が加速する場合、表面から氷が蒸発して噴出すガスが推進力となる。だがオウムアムアをはじめとする一部の個体では、水蒸気も一酸化炭素も検出限界以下であった。
「水素氷のブロック説」や「極めて高密度の有機化合物フレーク説」など、過激とも言える物理モデルが次々と提唱された。太陽光圧を直接受けるほどの極端な薄さを持つ構造物ではないかという推測さえ、学術誌の紙面を飾った。最新の流体力学シミュレーションと高精度分光分析をもってしても、全ての挙動を一枚の理論で説明しきるには至っていない。