埼玉県越谷市大間野町に位置していた「ゆの華 越谷店」は、地下1200メートルから湧出する「美人の湯」を最大の売りに、地域住民の生活インフラとして機能していました。泉質には肌の保湿・角質ケアを助けるメタケイ酸が豊富に含まれており、個性溢れる露天風呂やジェットバス、本格サウナなど充実した温浴機能を備えていました。
営業形態も非常に利便性が高く、平日は深夜2時、土曜日は深夜4時までのロングタイム営業を実施。外環自動車道・草加インターチェンジから約2km、無料駐車場150台を完備していたほか、南越谷駅・新越谷駅西口から午前11時から午後10時まで1時間間隔で無料送迎バスを運行するなど、車を所有しない高齢者から夜型のドライバーまで幅広い層に親しまれていました。
それほど高い集客力を誇っていた同施設がなぜ営業終了を選択せざるを得なかったのか。関係者の証言や当時の業界動向を総合すると、単一の集客不足ではなく、主に3つの構造的要因が重なった結果であることが浮かび上がります。
第1の要因は、温浴プラント・地下設備の深刻な老朽化です。地下深くから源泉を汲み上げる水中ポンプや熱交換器、複雑に入り組んだ配管設備は、長年の温泉成分やスケール(湯垢)の付着により激しい摩耗が進みます。営業末期にはジェットバスの一部機能停止や補修が散見されており、抜本的な改修には数千万円から億単位の設備投資が避けられない状況にありました。
第2の要因は、原油・ガスおよび電気代といったエネルギーコストの歴史的高騰です。温浴施設は、巨大な浴槽の湯温を365日維持し続けるため莫大な熱エネルギーを消費します。近年のエネルギー価格高騰は、入館料の小幅な値上げ程度では到底吸収できないほど営業利益を圧迫しました。
第3の要因は、感染症拡大期以降の生活様式の変容と深夜需要の縮小です。深夜営業を強みとしていた同店にとって、夜間帯の客足減少と深夜割増賃金を含む人件費の高止まりは採算分岐点を大きく引き上げました。これらが複合的に絡み合った結果、設備の更新時期をひとつの区切りとして事業継続の幕を引くという苦渋の決断が下されました。
なお、営業終了時に発行済みだった回数券の払い戻し対応については、公式告知に基づき一定の猶予期間を設けて現地フロントおよび郵送等での精算受付が行われました。法的な所定手続きを経て清算が完了しているため、閉館から年数が経過した現在における返金請求はすでに終了しています。