こうした個店の挑戦を後押しするように、業界の巨頭もまた大きな変革の波を起こしている。室町時代後期創業の老舗、株式会社虎屋の十八代当主・黒川光晴氏は、伝統の羊羹づくりを守り抜く一方で、自由な発想を取り入れたカフェ業態「トラヤあんスタンド」などを通じてあんこの魅力を現代の日常に溶け込ませてきた。「変えてはならない本質を守るために、時代に合わせて形を変え続ける」という姿勢は、多くの若手和菓子職人に強烈なインスピレーションを与えている。
業界団体である全国和菓子協会も、職人の技術継承と国内外への魅力発信に注力する。関係者は「和菓子は日本の四季と風土を映す鏡。テクスチャーや繊細な糖度のコントロールなど、職人が培ってきた高度な技術を次世代のイノベーションへと接続させることが急務だ」と指摘する。老舗の重みと新世代の感性が共鳴し合い、業界全体に心地よい緊張感と活気をもたらしている。