2歳半からヴァイオリンを始めた千住真理子は、12歳でNHK交響楽団と共演してプロデビュー。15歳で日本音楽コンクール最年少優勝、17歳でパガニーニ国際コンクールに入賞するなど、若くして華々しい成功を収めました。
しかし、その裏では重圧と多忙による過労、人間関係の悩みから深刻なスランプに陥ります。精神的・肉体的な限界を感じた彼女は、音大ではなく慶應義塾大学文学部哲学科へ進学。一時はヴァイオリンを完全に置き、一般企業への就職を真剣に考えるほどの活動休止期を過ごしました。
苦悩の底にあった彼女を救ったのは、母の言葉とホスピスなどでのボランティア演奏でした。自らの演奏を聴いて涙を流す人々の姿を目の当たりにし、「誰かの心に寄り添うために弾く」という音楽の本質に気づいたといいます。心身の不調や病気を乗り越えたこの挫折経験が、彼女の音色に深い包容力と生命力を与える契機となりました。