ネット空間や情報番組を席巻した「辞めろ」という強烈なコールは、決して単発の失言に対する一過性のヒステリーではありませんでした。その導火線に火をつけた直接の引き金は、2026年4月1日に行われた静岡県庁の新規採用職員向け入庁式での訓示です。壇上に立った川勝知事(当時)は、若手職員を前に次のような言葉を言い放ちました。
「県庁はシンクタンクです。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりするのとは違い、皆さんは頭脳、知性の高い人たちです」
報道各社がこの発言を速報すると、一次産業や製造業に携わる人々を露骨に見下す「明らかな職業差別である」として、瞬く間に全国規模の猛反発が巻き起こりました。静岡県は全国有数の茶どころであり、温室メロンやミカン、ワサビなどの名産地であると同時に、スズキやヤマハ、ヤマハ発動機といった世界的メーカーが本社を構える屈指の「ものづくり県」です。自らの足元を支える産業基盤と生産者を真っ向から否定するかのような物言いに、県民の自尊心は深く傷つけられました。
さらに火に油を注いだのが、発言直後の知事自身の釈明会見でした。当初、川勝氏は「職業差別と捉えられたのは本意ではない」「一部を切り取られた」と強弁し、謝罪や撤回を拒否。この責任転嫁とも取れる頑なな態度が、一般市民だけでなく全国の一次産業従事者や経済界の怒りを買いました。「これ以上、この人物に静岡県の舵取りを任せるわけにはいかない」という国民的な憤怒が、「静岡県知事辞めろ」という直接的な辞任要求へと結実していったのです。