個人向けの通信端末としての役割を終えたポケベルですが、その基盤技術は形を変えて今も社会を支えています。
ポケベルが利用していた280MHz帯(メガヘルツたい)の電波は、周波数の特性上、障害物を回り込んで届く能力(回折性)に非常に優れています。鉄筋コンクリート造の建物内や地下街であっても電波が遮断されにくく、スマートフォンが圏外になるような場所でも確実に情報を受信できるという強みを持っています。
この特性に着目したのが自治体の防災行政無線システムです。東京テレメッセージをはじめとする事業者は、ポケベルの送信網を活用した「防災ラジオ」や戸別受信機の配信インフラを展開。豪雨や地震などの災害時においても途切れない情報伝達手段として、全国の多くの自治体に採用されています。
さらに近年では、Z世代を中心とした平成レトロブームの文脈において、ポケベルの造形や「数字暗号」の概念が再評価されています。スマートフォンのように常時接続されず、返信のタイムラグを楽しみ、限られた情報量から相手の気持ちを推し量るコミュニケーション様式は、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代に対する新鮮なカウンターカルチャーとして受け入れられています。