鮎の塩焼きがなぜこれほどまでに人々を魅了するのか、その秘密は熟練の焼き技術にあります。名店が実践する炭火焼きの極意には、科学的な裏付けと長年の経験が詰まっています。
第一の秘訣は「遠火の強火」です。ガス火では水分が身に残って水っぽくなりがちですが、炭火から放射される遠赤外線は表面を素早く焼き固め、旨味成分と水分を内部に閉じ込めます。外側はパリッとしたクリスピーな食感に、中は蒸し焼き状態でふっくらと仕上がります。
第二の技は「踊り串(波串)」と「化粧塩」です。鮎が清流を泳いでいるかのようにうねりを持たせて串を打つことで、熱の通りが均一になり、見た目にも美しい躍動感が生まれます。また、焦げやすい尾ビレや胸ビレにはたっぷりと塩をまぶす「化粧塩」を施し、ヒレを白く美しく保ちながら、身の部分には程よい振り塩で素材本来の甘みを引き出します。頭を下に向けてじっくり余分な脂を落とすことで、川魚特有のクセを完全に消し去るのが名店の流儀です。