グラスピングテストの意義を理解するには、腸脛靭帯の解剖学的構造を知る必要があります。腸脛靭帯は、骨盤の骨頭付近から大腿部の外側を通り、膝の下にある脛骨のガーディ結節(Gerdy's tubercle)まで伸びる強固な太い筋膜の帯です。
歩行やランニングの際、膝関節は屈曲と伸展を繰り返します。膝の屈曲角度が約30度に達した瞬間、腸脛靭帯は大腿骨外側上顆の前方から後方へと移動します。この角度こそが「インピンジメントゾーン(摩擦領域)」と呼ばれ、靭帯と骨の間で最も高い圧縮力と摩擦が生じる危険地帯となります。
近年では単なる摩擦だけでなく、靭帯と骨の間にある脂肪組織(fat pad)への持続的な圧迫や微細な炎症が強い痛みをもたらすという説も支持されています。いずれにせよ、屈曲30度での機械的ストレスが病態の中心であることは変わりません。