世界銀行や国際金融機関の後押しを受け、1990年代から2000年代にかけて世界各地で水道民営化が推進されました。しかし現在、世界の主要都市では一度民営化した水道を再び自治体の手に戻す「再公営化(Remunicipalisation)」の動きが主流となっています。国際調査機関の報告によると、過去20年間で世界数百都市以上が水道の公営化へと舵を切り直しました。
その代表例がフランスのパリ市です。パリ市は1850年代以来の歴史を持ちながら、1985年に世界二大水メジャーであるヴェオリア社とスエズ社に水道運営を委託しました。しかし、民営化期間中の約25年間で水道料金は実質で2倍以上に高騰。さらに設備投資の先送りや不透明な会計処理が問題視され、市民の不満が爆発しました。
危機感を強めたパリ市は契約満了を迎えた2010年に水道事業を再公営化し、公公連携企業「オー・ド・パリ(Eau de Paris)」を設立。再公営化の初年度には中間マージンを排除したことで約3500万ユーロのコスト削減を達成し、即座に水道料金の約8%値下げを実現させました。水質管理の透明性も劇的に向上し、市民参加型の運営モデルへと再生を果たしています。
また、南米ボリビアのコチャバンバで起きた「水戦争(2000年)」では、外資系企業による民営化直後に料金が数倍に跳ね上がり、貧困層が雨水を集めることすら禁止されたことで大規模な暴動へと発展、死傷者を出す惨事となりました。これらの海外事例は、命に直結するインフラを市場原理に委ねた際の危険性を明確に物語っています。