私たちが日常で見慣れているコインの表面には、京都・宇治に建つ国宝・平等院鳳凰堂の優美な姿が誇り高く刻まれている。この壮麗な構図を手掛けたのは、昭和を代表する洋画家・辻永氏だ。伝統的な日本建築の持つ美意識と立体感を、わずか直径23.5ミリメートルの金属円盤上に凝縮させた手腕は、当時の貨幣デザインにおける金字塔と称されている。
現在発行されている十円青銅貨の原型は、太平洋戦争後の混乱期を抜け出し、復興への道を歩み始めた昭和26年(1951年)に誕生した。平和の象徴としての鳳凰堂と、裏面に配された瑞々しい常緑樹の枝葉。デザインの細部には、単なる通貨を超えた国家的再起の願いが込められている。だが、この洗練されたデザインの中にも、製造時期によって微妙に異なる「隠されたバリエーション」が存在し、それがコレクターたちの探究心を刺激してやまない。