新宿や梅田をはじめとする巨大ターミナル駅の地下街、あるいは数階分がぶち抜きになったショッピングモールの吹き抜け構造。都市の発展とともに増殖したこれらの空間で、異様な生きづらさを訴える人が増えている。「頭上が重く押しつぶされそうになる」「天井が低く迫ってくる感覚に襲われ、息が吸えなくなる」——当事者たちが語る症状は、従来の閉所恐怖とは明らかに異なる重層的なものだ。
高所恐怖症が高所に立った際に「落ちる危険」を感じて足がすくむのに対し、低所恐怖症では「空間の深さや強烈な視覚的圧迫感」によって自己の位置感覚を見失う。地面にしっかり足がついているにもかかわらず、まるで重力が無効化されたかのような浮遊感に陥ってしまう。これは視覚系と前庭感覚の統合がうまく機能しなくなることで生じる一時的な空間認識障害の一種であり、本人の意志の強さとは無関係に身体が危険信号を発出してしまうのだ。