左右の虹彩で色が異なる現象は、医学・獣医学において虹彩異色症(ヘテロクロミア)と呼ばれます。猫の目の色は、虹彩に含まれるメラニン色素の量によって決まり、色素が最も少ないブルーから、グリーン、ヘーゼル、イエロー、そして最も色素が多いアンバー(カッパー/銅色)へとグラデーションを描きます。
通常、オッドアイは白猫や白斑(白いブチ模様)を持つ猫に圧倒的多数で見られます。これは、被毛を白くする「優性白遺伝子(W遺伝子)」や「白斑遺伝子(S遺伝子)」が、胎生期におけるメラノサイト(色素細胞)の移動を抑制するためです。片方の目だけに色素細胞が届かなかった結果、片目がブルー(色素なし)、もう片方がイエローやアンバー(通常の色素)として定着します。
一方、黒猫は全身にメラノサイトが満遍なく行き渡る強力な遺伝子構成を持っています。全身に色素を行き渡らせるプロセスの中で、片方の眼球のみメラニン沈着が偶発的・局所的に阻害されるという現象は、遺伝学的に極めて特異なイレギュラーです。この突然変異的な発生メカニズムゆえに、オッドアイ黒猫の確率は白猫のオッドアイ(約25%〜40%)と比べても桁違いに低く、獣医学界の統計や保護猫現場のデータからも数万頭から十数万頭に1頭(0.001%〜0.01%以下)の奇跡と位置づけられています。
日本猫のオッドアイにおいても、古くから和猫の混血種の中で稀に出現が確認されてきましたが、純黒の毛並みを持つ個体での発現は極めて稀少であり、学術的にも高い関心を集め続けています。