都内のオーセンティックバーに立つ熟練バーテンダーへの取材や現場観察を行うと、世間一般のイメージとプロフェッショナルが捉えるショットの世界には、決定的な断絶が存在することが浮き彫りになります。
「若い世代のお客様の中には、ショットグラスを見るだけで身構えてしまう方が少なくありません。学生時代のサークルや繁華街の居酒屋で、コールとともに無理やりテキーラを流し込まれた苦い記憶がトラウマになっているケースです。しかし、本来バーにおけるショットグラスは、アルコールの刺激を最小限に抑えつつ、上質な原材料のアロマを鼻腔へまっすぐに届けるために選定された機能美あふれる器なのです」(都内老舗バー・チーフバーテンダーの証言)
SNSや知恵袋等のコミュニティ投稿を分析しても、「ショット=泥酔するための手段」「罰ゲーム」というネガティブな言及が散見される一方で、バーカルチャーを好む層からは「テキーラ・アネホのバニラ香に驚愕した」「ニコラシカを口の中で完成させる体験に感動した」といったポジティブな体験談が寄せられています。
特にプロの間で高く評価されるのが、一口で物語を完結させるショットカクテルの存在です。代表例である「ニコラシカ」は、ウォッカを満たしたショットグラスの上に、砂糖を盛った輪切りレモンを乗せて供されます。まずレモンと砂糖を口に含んで強く噛み締め、口内が甘酸っぱさで満たされた瞬間に冷たいウォッカを一気に流し込むことで、口の中で完璧なカクテルが完成するという極めて知的な仕掛けが施されています。