『きかんしゃトーマス』の原点には、原作者ウィルバート・オードリー牧師が綴った確固たる鉄道哲学がある。彼が手がけた児童文学作品は、単なる子供向けのファンタジーにとどまらず、実際の鉄道運行の安全管理や蒸気機関のメカニズムに対する深い敬意に基づいていた。
『うしろむきのトード』においても、その精神は遺憾なく発揮されている。後ろ向きにしか走れない自らの立場を受け入れ、前方を監視する「目」として己の職務を全うするトードの姿は、オードリー牧師が描こうとした「役立つ機関車(そして車両)」の道徳観そのものだ。組織の中で地味な役割を担う存在にスポットを当てる語り口は、大人の鑑賞にも耐えうる深みを与えている。