七夕の象徴である織姫(織女星=こと座のベガ)と彦星(牽牛星=わし座のアルタイル)。現代のポップカルチャーでは「年に一度だけ逢瀬を許された悲恋の恋人たち」と捉えられがちですが、原典となる中国神話における二人の正式な関係は「夫婦」です。
天帝の娘で機織りの名手だった織姫と、真面目な牛飼いだった彦星は、結婚した途端に仲睦まじくなりすぎて仕事を完全に放棄してしまいました。その結果、神々の衣服は不足し、牛は病に倒れる事態に発展。激怒した天帝が二人を天の川の東西に引き離し、「真面目に働くなら年に一度、7月7日の夜だけ会うことを許そう」と戒めたのが物語の真相です。つまり七夕伝説は、単なるロマンスではなく「職責を果たし、節度を保つことの大切さ」を教える訓話でもありました。
日本における七夕の由来は、古来の禊(みそぎ)行事である「棚機津女(たなばたつめ)」の信仰と、奈良時代に中国から伝来した宮中行事「乞巧奠(きっこうでん)」が融合したものです。機織りや手芸、詩歌の上達を祈る貴族の祭礼が、江戸時代に入って庶民の寺子屋教育と結びつき、習い事の上達を願う現在のスタイルへと定着しました。