その瞬間は、突如として訪れた。5回表、2死走者なしの場面。それまで快調にアウトを積み重ねていたダルビッシュの指先から放たれたフォーシームは、本来のキレを失い、高めに大きく外れた。球速はわずか91マイル(約146キロ)。直後のスライダーもコントロールが定まらず、捕手のサインに首を振る彼の表情は苦渋に満ちていた。ベンチから監督とトレーナーが血相を変えてマウンドへ走る。短い会話の後、彼はグラブを叩くこともなく、静かにフィールドを後にした。
サンディエゴの地元テレビ局の実況席は一時、沈黙に包まれた。「何かおかしい。彼ほどのコントロールを持つ投手が、これほど連続して失投するはずがない」。精密な肉体管理で知られる彼だからこそ、この突然の異変はスタジアム全体に不穏な空気を伝染させるのに十分だった。